演劇体験で人を育てる 株式会社わらび座

わらび・・・ 美しい花は咲かないけれど、飢饉の時には根っこのでんぷんで村人の命をつなぎ、山火事の時は「山は焼けてもわらびは死なぬ」といわれるほど生命力の強い植物。

仙北市角館郊外にあるあきた芸術村を経営する株式会社わらび座の中核、劇団わらび座の名前にはそんなわらびのようにありたいという創設者たちの願いが込められているのです。

秋田にしっかりと根を張り、オリジナルな舞台芸術を発信し続けるわらび座。エンターテインメントにとどまらず、子供や大人に演劇体験を通して新たな自分を発見させる教育事業を拡大しつつあります。今では温泉ホテルビール工場レストラン農園木工房などさまざまな体験ができるユニークな施設を持つ「村」を構成しています。

そんなわらび座の劇団についてのお話を取締役・劇団部⻑の管野紀⼦さんに、ビール⼯場についてのお話を2代⽬⼯場⻑に就任して間もない佐々⽊純⼀さんにお聞きしました。また、若⼿社員の代表として⼊社1年⽬の奥⼭紗恵⼦さんにはわらび座に⼊社した経緯などをうかがってきました︕

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わらび座の歴史

わらび座の創設者は原太郎という兵庫県生まれの人でした。生活に根ざした芸術や芸能を求めて民謡の宝庫と言われていた秋田に約70年前にやってきました。原太郎と仲間たちは地元の人の農作業を手伝いながら、地域に伝わる踊りや歌を集め、それを基にした舞台芸術を創作するようになりました。

わらび座は長年、全国各地を巡業して回っており、角館はいわば「実家」のような存在だったのですが、90年代には温泉のある宿泊施設「ゆぽぽ」を開業、地ビール「田沢湖ビール」のブリュワリー・レストランをオープンし、角館にしっかり根を下しました。

ヒューマニズムあふれるミュージカル

二宮金次郎を題材にした「KINJIRO!」のような固いイメージの人物をハートフルなコメディタッチで描いた作品、震災からの復興の視点で伊達政宗の偉業「慶長遣欧使節団」を取り上げた「ジパング青春期」、宮沢賢治の童話を基にした「セロ弾きのゴーシュ」作品などヒューマニズムあふれるミュージカルがわらび座の持ち味です。

2019年に新たに制作されたミュージカルは、日本の女子体育の母と言われた秋田出身の井口阿くりを主人公にした「いつだって青空-ブルマー先生の夢」、秋田犬のように愛されるアイドルをめざす女子高生たちのミュージカル「あきたいぬになりたくて〜ご当地アイドル“Ω(オメガ)スキー”奮闘記〜」

「いつだって青空」から「AKITA on do ! 」

いずれの作品も脚本、演出、音楽、振り付けなど日本の舞台芸術界の一流の方々が手掛けています。

芸術村での公演回数は年に250回。上演回数で劇団四季と宝塚に次ぐ劇団なのです!!人口2万6000人の仙北市で!

温泉や地ビールに進出

温泉や地ビールは、劇場を訪れる人たちのために新たな魅力を創り出そうという思いから作られました。

ビール作りは、角館にふさわしい新規事業として何をやろうかと悩んでいた時、1994年に酒税法が改正され最低製造数量が引き下げられたのをきっかけに取り組み、1997年に創業しました。当時の総料理長の知り合いにビールづくりに情熱を燃やしている人がいたので、その人を工場長に迎えてビール製造が始まったのです。

実際のところ、さして深い戦略があったわけではないとのこと。(笑) でもこうした経緯で工場長になった小松勝久さんがドイツやチェコに勉強に行って作り始めたビールは、高く評価され、2006年以降毎年のように国際的なビールの賞を獲得しています。2019年も、ピルスナーがワールド・ビア・アワード世界一、アルトがヨーロピアン・ビアスター金賞を受賞しています。

小松さんが目指したのは3リットル飲めるビール。酵母やホップにこだわり苦みを抑えた飲みやすいビールが中心です。でも、例えば2019年には秋田でハーブを栽培している龍角散とコラボして龍角散のハーブパウダーを副原料に使用したビールを作ってみたり、企業からの依頼を受け、秋田県の名産である枝豆を使ったビールなど、話題性のあるビールも次々に生み出しています。

またエコニコ農園では、大粒のブルーベリーを栽培し、無加糖や低糖度のグルメなジャムを直営加工所で製造しているほか、6月下旬から7月下旬には摘み取り体験にたくさんの観光客が訪れます。

演劇やダンスを使った教育事業

最近、わらび座は小中学生の演劇体験、企業の研修を提案しています。演劇を体験することで、表現が豊かになったり連帯意識が芽生えるそうです。何度も研修に来ているある岩手の会社では離職率が下がったとか。

都会の子供に比べ引っ込み思案で自己アピールが下手と言われる秋田の子供たち。仙北市で市内の小中学校から希望者を集めてミュージカル作品の一部を上演してもらうプログラムを実施したところ、次の年もやりたいという子供たちが多く、その発表会を見に来た仙北市の門脇光浩市長に、彼らが「市長さんも予算で大変だとだと思いますが、続けてください!」と直談判し、継続が決まったそうです。自己アピール、上達してますね!

わらび座は、自治体や文化庁の支援も受けて、教育事業を新たな柱にしていきたいと考えています。

県内の学校からは、「ダンス甲子園」に出場するので振り付けのチェックをしてほしいとか、学芸会で演劇の練習をしてきたが、最後にプロの目でアドバイスして欲しいといった依頼や、地元の素材を生かした市民ミュージカルを作ってもらいたいといった話もあるそうです。

「県内でのこうした取り組みは、わらび座の大きな役割なのかなと思っています」(管野さん)

全国公演・海外公演

わらび座は、現在も全国で公演を行っていて、東京では800~1000席の劇場をいっぱいにして観客を沸かせています。これまでにアメリカ、アジア各国、ブラジルなど海外16カ国でも公演しました。

「演劇を通して、国と国の間ではいろいろあっても互いに分かり合え、出会った人をいとおしく思える体験をしました」と管野さんは感慨深げに語っていました。

秋田にまつわるテーマで最初に取り組んだのは、なまはげ伝説を題材にした「男鹿の於仁丸(おにまる)」でした。次に辰子姫伝説「龍姫(たつひめ)」を上演。創立50周年のときは、「東北のわらび座」になろう!ということで、「アテルイ」という古代の蝦夷(えみし)を題材にしたり、青森県出身の版画家、棟方志功を取り上げたり、岩手県の詩人・童話作家宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に基づいた作品も手掛けました。その中で、最もヒットした作品は2007年の「小野小町」だそうです。

「なかいち」の「地域の宝」上演事業が転機に

管野さんは、秋田市の中心市街地の再開発によって建設された複合施設「エリアなかいち」の秋田市にぎわい交流館AU(あう)で2015年から始まった公演は、秋田に拠点を持つ劇団であるわらび座にとって大きな転機になったと感じています。この事業は、中心市街地の活性化と演劇を通したふるさと教育の場をつくることが目的。官民一体となった実行委員会が、エリアなかいちのホールに3年間にわたり1万人以上の小中学生を招待し秋田の歴史に根ざした「政吉とフジタ」「リキノスケ走る!」、「東海林太郎伝説」の3作品を、合わせて125ステージ上演しました。2018年度、2019年度も少し形を変えて続いています。 

わらび座はさまざまな形で秋田に貢献していくという思いをさらに強くしました。

わらび座は多種多様な人の集まり

さて、わらび座の事業の話が長くなりましたが、わらび座はどのような人材を求めているのでしょうか?

管野さんは、「わらび座は創立70周年近いのですが、常に動いてるんですね。次はこういうことやってみてはどうかといつも考えているので、若い方、年齢ではなくて、発想力が豊かな人に来て欲しい」そうです。

劇場、ホテル、レストラン、ビール工場とさまざまな事業を展開しているので、いろんな人材がいます。

俳優については、わらび座の俳優養成所があるので、そこの研究生になるという入り口があります。わらび座の営業やホテルスタッフについては、普通に民間の就職サイトを使って募集しています。

役者になりたいという人たちに対し、管野さんは、「私たちが大事にしたいと思っているのはものを創り出したい、喜ばれたいという気持ち」、「自己表現がしたいというよりは、相手の言葉を聞けることがいい役者になれるかどうかを決める」と考えているそうです。

二代目ビール工場長

様々な顔を持つわらび座の事業として劇団の次にあげるべきなのがブリュワリー。昨年、小松さんからバトンを受け2代目工場長になった佐々木純一さんにわらび座に就職した経緯や仕事についてお聞きしました。

出来たばかりのビールをテイスティングする佐々木純一工場長

佐々木さんは、大仙市出身。運命的な入社でした。醸造を学ぼうと新潟の専門学校に進学し、就職は地元秋田でと考えていました。卒業する年の1月に会社訪問のため訪れた田沢湖ビールで、ちょうど醸造の技術者が辞めたところだと言われ、すぐに面接、そのまま採用になって働き始めたそうです。工場スタッフは5人の他に営業担当者もいます。

 「ドイツやチェコに行って自分たちのやっていることのレベルを比べて来て、自分たちが負けていないということを感じることができました」(佐々木さん)

今は、日本独特のスパイスを使った輸出向けのビールも研究中だそうです。そんな実験、楽しくて仕方がないですね。

心掛けているのは丁寧さ。一回に2000リットルを醸造するので、一つ間違えると2000リットルが商品価値を失ってしまう。仕込みの日は一日ずっとビールの釜の前に付きっきりだそうです。

ビール作りをするかたわら、ビールバーに出掛けたり、たざわこビールを置いている店を訪問したりすることもあるそうです。

わらび座の営業のお仕事

2019年4月に入社した営業の奥山紗恵子さんに、わらび座に就職した理由や仕事についてお聞きしました。奥山さんは、羽後町の出身で、高校時代は「東北を出たい!」と思って群馬県の高崎経済大学に進学しました。地方創生を学ぶ学科で、在学中から地域おこしのイベントの企画や運営を行っていましたが、次第に秋田でもこういうことができたらいいなと思うようになったそうです。

わらび座を志望したのは、「観光をテーマにしたゼミに入ったことや、わらび座は秋田の中でいちばん面白いことをやっていると思った」からだそうです。

わらび座の営業職として、奥山さんは、主に学校を訪問しています。生徒さんにわらび座の演劇やミュージカルの作品を紹介して鑑賞を薦めたり、わらび座でダンスや演劇を体験する校外授業の紹介をしています。

入社してびっくりしたのは、営業部の会議での議論が活発なこと。またわらび座の演劇やダンスのワークショップ参加した生徒の皆さんが、何かをきっかけにして変わって行くのを目の当たりにし、感動したそうです。

高校時代は、「秋田だけで自分の人生を完結させたくない!」と思っていたそうですが、今は、地元に戻ったことに後悔はないとのこと。高校時代までは秋田のことを知らなすぎたと思い、県内のいろんなところを訪ね歩いたり、調べたりする一方、多くの人に秋田のことをもっと好きになってもらうにはどうしたらいいかと考えながら暮らしているそうです。

取材を終えて

わらび座は本当にいつも動いています。記事を書いている間にも発表があり、仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」というサービスを東北ITbook株式会社という会社と共同で取り組むという発表がありました。都会の人にわらび座で温泉に入ったり観劇したりしながらリラックスして仕事ができる環境を提供するのです。この事業は地元の活性化にもなると期待しています。目が離せない会社です。

取材・文・写真:竹内カンナ、渡部みのり

◆わらび座のホームページ

秋田県就活情報サイト KocchAke!(わらび座の採用に関する詳細が掲載されています)

Kocchakeは、秋田県内企業の就活情報が満載のサイトです。

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