若社長が仕掛ける古くて新しい佃煮 佐藤食品

佐藤賢一さん、潟上市で佃煮の製造販売を手掛ける佐藤食品の四代目若社長。言葉のはしばしに佃煮への愛を感じる35歳。「この年代の人で佃煮を買う人、どのぐらいいるかなあ」と思いながらお話を聞いてるうちに自分も佃煮が食べたくなっていました。

今年は、佐藤さんにとって画期的な年になりそう。潟上市の佃煮屋の若手4人で「スメルト」というユニットを組んで佃煮の商品開発や普及に向けて動き出しました。スメルトとは、潟上の佃煮の主原料であるワカサギの英語名です。

県からの助成も受け、産業デザインや商品開発や国内外の販売の支援をするグループ「ててて共同組合」のアドバイスを受けながら進めていきます。

佐藤社長、すでに佃煮業界では有名人。あのテレビ東京のドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」の取材も受けたほか、なんも大学の「秋田のいいとこ」でも紹介されてます。

最初にブレイクしたのが、若さぎのからあげにチョコレートをかけた「愛のカルシウム」こと「わかチョコ」。北海道のチョコ屋さんロイズ(ROYCE’)が考えた「ポテトチップチョコレート」や柿の種チョコレート。チョコとしょっぱいものの組み合わせは、けっこういけるんです。

「2011年のバレンタインデーの前に、従業員の間でチョコレートかけたら何となるべって話になって、やってみれといってやってみたら意外とおいしかったんです」(佐藤社長)

商品化し、毎年改良を重ねていったところ、メディアの取材が殺到し、ばか売れ。2011年にはネット通販の「楽天市場」のリアルタイムランキングの佃煮部門だけでなく食品部門でも1位に輝きました!

売り方もうまい。バレンタインデー向けにわかチョコを買う人に向け、ネット販売で「本命の方に差し上げますと、本命じゃないと思われる可能性がございます。あらかじめご了承ください」と書いてあるのをみて、思わず爆笑!

秋田県人は佃煮が大好きで全国平均の2倍も食べているそうです。しかし、佃煮は漬物などと同じく冷蔵庫がなく、少しのおかずでごはんをたくさん食べていた時代に生まれた伝統食品。

朝、獲れたての小魚を港から5分の工場に届けてもらい、すぐに炊き込む「生炊き製法」が佐藤食品の自慢。

生炊き若さぎ

「佃煮というのは、いちばんおいしい旬を閉じ込めるための方法なんです」(佐藤社長)

大手ではいったん塩水で煮て煮干しにして扱いやすくしてから味付けをするのですが、それでは魚の旨味が水に流れ出てしまってもったいないと思うそうです。佐藤食品は、素材の鮮度を活かしてすぐに加工できるからこそ生炊き製法ができるのです。

ベテランの職人さんのいる昔懐かしい雰囲気の工場

「大量生産と生炊き製法の違いは食べた瞬間にわかります!」(佐藤社長)

佐藤食品の「生炊ちりめん」、「若さぎ佃煮」、「ほたてからあげ」、「生炊くるみしらす」などは水産庁長官賞や農林水産大臣賞受賞といった賞を受賞しています。

混ぜ混ぜしています

また、若い人にも手に取ってもらいたいと、パッケージにも力を入れ、2013年には、横手のcasane tsumugu(田宮 慎 代表)を起用してしゃれたパッケージで「からあげミックス」と「磯のり白魚」を発売、グッドデザイン賞を受賞しました。

もうちょっと商品をご紹介します。

定番中の定番が、「生炊ちりめん」。やわらかく甘い味付け。炊きたてのごはんにのせて食べるとかむにつれて口の中に旨味が広がります。

生炊ちりめん

潟上の佃煮といえばワカサギ。ワカサギを使った商品は「生炊きわかさぎ」など、ざっと数えただけで7種類。

甘辛しょうゆ味以外に「若さぎからあげ」もあります。二度上げしてカリっとしたからあげは最近人気が急上昇中。わかチョコにもこのからあげを使います。

若さぎからあげ

私にとってまったく未知の世界だったのが「いかあられ」。ロングセラーで、北海道産の「のしいか」を甘いタレで炊いたものに「小豆・金時豆・エンドウ豆」を混ぜています。昔はおやつだったそうです。

いかあられ

甘いイカは他の地域にもありますが、甘納豆をあしらったのは秋田だけ。昔は色鮮やかにするために豆に着色料を使っていたそうですが、今は「着色料・保存料」を一切使っていないそうです。この組み合わせ、食べてみなければ・・・。

同社のウェブサイトには「かくちょう通信」というブログがあり、ワカサギの佃煮を薄く切った大根の一夜漬けで巻くとか、卵焼きにちりめんの佃煮を入れるとカルシウムたっぷりになり味付けも不要といった食べ方のバリエーションも紹介してありました。

「佃煮はチーズともよく合います。人によっても食べ方はさまざまで、いかあられにはマヨネーズを付けるとおいしいという人もいます」(佐藤社長)

会社の組織体制づくりにも力を入れており、若い人の採用を増やしています。社長になった2008年に佐藤社長は弱冠24歳で、従業員の平均年齢は58歳と、お父さんのような世代の人が大半でした。定年を迎える社員の代わりに新卒や若い既卒が入社、どんどん若返りました。

「食に興味があり、地域を大事にしたい、時間で働くのではなく『何かしたいよな』って思っている人材に来て欲しい」(佐藤社長)

また、従業員の待遇改善にも意欲的です。

「現状はまだまだですが、人数が少なくても大企業に近い待遇にしたいと思っています。食品業界は人件費が低いとか言われますが、業界の常識とは関係なくいい会社は全国にあります」(佐藤社長)

直販所の秋田美人勢ぞろい!

数々の実績を上げてきた佐藤食品。ですが佐藤社長は、これからが勝負だと考えています。佃煮業界が全体的に縮小傾向にある中で、単独で頑張ってもしょうがない、みんなで一緒に佃煮のブランド戦略を練り、消費を増やして行こうという思いが「スメルト」の結成につながりました。

このユニットに参加したのは、佐藤徳太郎商店社長の佐藤進幸(みちゆき)さん、菅英佃煮本舗常務の菅原英信さん、千田佐 市商店取締役の千田浩太さん。全員が「U(アンダー)50」。

今年6月。まず、ててて協同組合の人たちと一緒にそれぞれの工場を視察しました。各会社に秘伝のたれや工程があるとは思いますが、そうした壁を取り除くところから始めました。

今年は、佃煮市場の分析を行い、来年は新市場へ挑戦する計画です。

佐藤社長の話を聞いていると、佃煮という食べ物が好きなだけでなく、地域の歴史も潟上という土地柄も、すべてが好きなんだなと思いました。子どもの頃から家業を手伝ってきて、家を継ぐことに疑問を感じたことはありませんでした。その熱意には伝染性があります。

いくつもの新しいアイデアを考えては実行しています。2015年にはペットフードも開発して販売しています。

これからどんな佃煮を作っていってくれるかとても楽しみです。

◆佐藤食品のホームページ

◆佐藤食品のFacebook

取材・写真:佐藤裕佳、薄木伸康 文:竹内カンナ

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