重度障がい者と親たちが地域で「生ききれる」ように 八代美千子さん

重度の障がい者と家で一緒に暮らす家族の大変さを考えたことがありますか?八代美千子さんのお話を聞きながら、わたしは自分があまりに何も考えずに生きてきたことにショックを受けました。

障がいのため、口で食べることができず胃瘻(いろう)から栄養を摂ったり、人工呼吸器をずっと付けていたり、寝返りができないので夜中でも体の向きを変えてあげなければならない障がい者。痰が自分で出せず肺に入らないように頻回に吸引をしなければいけなかったり、急に体調が悪化する時もあります。24時間365日、目が離せません。

「親御さんはハラハラ、ドキドキの連続、その上、孤独な思いをしている人も少なくないです」と八代さん。

そういう障がい者の親たちは、夜もまとまった睡眠時間がとれず、自分の時間がなかなか持てません。また70~80歳の親が40~50歳の子供の面倒をみているようなケースもあります。親は自分に何かあったときのことを考えておかなければなりません。

どんなに子供がかわいくても24時間365日一緒にいて疲れ切っていては、親たちも優しくなれない時があるでしょう。八代さんは、親たちにほっとする時間を持ってもらいたい、そして重度障がい者にもっといろんな経験をしてもらいたいと考え、重度障がい児が通う「放課後等デイサービス」と医療ケアが必要な障がい者を日中預かる「生活介護事業」を提供する「にこっと秋田」を創ることにしました。

秋田市御野場(おのば)の民家を改築して、10月に開所予定だそうです。

5月12日には、重度障害者が暮らしていける社会を目指すために講演会とトークセッションの開催を予定しています。

秋田には重度障がい児を主たる利用者にしている放課後等デイサービスは一つもないそうです。また医療ケアが必要な障がい者を日中預かってくれる場所やショートステイができる場所も他の多くの都道府県に比べて少ないそうです。

八代さんは3月まで医療療育センター内の生活介護事業所「よつ葉」で、18歳以上の障がい者のデイケアに携わってこられました。それ以前にもセンターの病棟で勤務してきたので、重度障がい者のケア歴は16年にも及びます。様々なケースと関わるうちに、八代さんは、障がい者が住み慣れた地域で多くの経験をしながら人々に囲まれて生活するという、ご自分の理想を実現したいと思うようになりました。

重度障がい者の多くは、ほとんど意思表示ができないので、彼らもいろいろ考えたり感じたりしているのだということを忘れがちです。八代さんのように長く障がい者に接している人でもなかなか気持ちに気付いてあげられないことがあるそうです。

何年か前に日本テレビの「24時間テレビ」で徳光和夫さんがマラソンにチャレンジしたことがあります。当時70歳ぐらいだったのに完走したのですが、ずいぶんと時間が掛かったそうです。八代さんが担当だったあるお子さんは、その様子をテレビで見ていました。消灯時間の午後9時になったので、八代さんが「消灯だよ~」といって寝かせる準備をしながら、ふっとその子の方を振り向いたら、顔が涙でびしょびしょでモニターの心拍数がすごい数字になっていたのだそうです。八代さんはびっくりして、「そんなに徳光さんの応援していたんだ~。気付かないでごめんね!きょうだけだよ」といって番組が終わるまでこっそり見せてあげたそうです。

八代さんは、すでにそうした施設を作った方たちからも大きな影響を受けました。特に名古屋の社会福祉法人「ふれ愛名古屋」の鈴木由夫理事長からは、さまざまな面で影響を受けたそうです。八代さんは鈴木さんの講演を聴き、重度障がい者の施設が「なければ創ればいい」という鈴木さんに背中を押されて、自分で施設を作ろうと決断し、その後も鈴木さんの支援を受けながら準備を進めてきたそうです。

八代さんは、「にこっと秋田」で、地域の人たちの手助けを受けながら重度障がい者が、健常者と一緒に何かをやる、やれないとしても同じ場所にいて雰囲気だけでも味わうことができたらいいなと思っています。

「にこっと秋田」に建て替えようと思っている民家は、ほとんどシャッター街になってしまった商店街の一角にあり、周囲にはおじいちゃん、おばあちゃんたちも多いので、その方たちが気軽に「お茶っこ飲みに来た~」と言って寄ってくれるような開かれた場所にしたいと思っているそうです。八代さんは、近所のおばあちゃんが「漬物でも一緒につけねが~」なんて言ってくれたらいいなあと楽しみにしています。

シャッター街の中に、ポツンと寿屋さんという和菓子屋さんがあって、そこの「ぽてとまんじゅう」がとてもおいしいそうです。八代さんは、そのおまんじゅうを「にこっと秋田」の上棟式のときに配らせてもらおうと思っているそうです。地域との関わりを持ち、それぞれが役割を持った大きな家族になりたいと。いろんな夢が広がりますねえ。(笑)

今も秋田では障がい者を見る目には冷たいものがあり、見ないようにしたり、離れようとする人が多いのが実情だそうです。八代さんは、「わたしも看護師になりたてのころはそうでした」と振り返ります。でも、身近に接するようになればそんなことはなくなるはずとおっしゃいます。なにせ彼女は、世話をしてきた子供たちが可愛くてしょうがないのです。八代さんと話をしていて、子供たちや親たちを助けたいという気持ち以上に、子供たちが可愛くて可愛くてしかたがない、子供たちのそばで暮らしたいという気持ちでいっぱいなのを感じました。

「にこっと秋田」は、医療療育センターと併設されている支援学校に通う子供たち5人と18歳以上の障がい者5人を日中預かります。ここでの事業が軌道に乗ってきたら、秋田市の手形や広面など、緊急のときにすぐに対応をお願いできる病院のそばに次の施設を作れたらと思っているそうです。事業を拡大したいということではなく、秋田にはそうした施設が足りなすぎる、つらい思いをしている人たちが多すぎると思うからです。車にのっているのも体への負担が大きい障がい者が30分ぐらいで来られるように。スタッフも確保しなければなりません。簡単ではなさそう。

八代さんの新たな挑戦、多くの人に理解され、広がっていってくれるといいなと思いました。

八代さんがかかわってきた「めんこさん」たちです!

連絡先: 八代美千子さん

Tel: 090-4556-3772

E-mail:       hachimichimie1212@yahoo.co.jp

文:竹内カンナ

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